2015年9月、国連サミットにおいて「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された国際目標である「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」が全会一致で採択されました。そして今では、SDGsは世界中の国、自治体、民間企業、NPO、一般消費者等の全てのステークホルダーにとってその活動の旗印として重要視されるに至っています。これは、地球温暖化抑制等の地球環境保全と地球規模での持続可能な世界の実現の両立が、21世紀の人類にとって早期に達成すべき課題と認識されている証左と言えるでしょう。
一方、森林バイオマスの積極的かつ適切な利活用が地球環境保全に果たす役割が大きいことは認識されているものの、化石資源依存の産業構造からの脱却は依然として十分に進んでいません。これは地球環境への負のインパクトを大幅に減少させる「化石資源から再生可能資源(バイオマス資源)への転換」を正当化し、推進するための新たな経済理念が社会全体に十分に浸透していないことが原因だと考えられます。
我々は、このような状況を打破するために、化石資源ベースの経済からより革新的で温室効果ガスの排出の少ない経済への転換を目指す新たな経済理念「バイオエコノミー」の理念の元に、産学官金が一体となって「モノづくり」を推進するとともに、その価値を社会全体が共有することが大切だと考えます。「バイオエコノミー」は地球環境との親和性の高い「ゲームチェンジ(ビジネスにおける技術的変革)」を伴う新たな経済理念で、SDGsやパリ協定といった国際的なアジェンダ・協定とも密接に関連している概念でもあります。
2018年4月に設立した秋田県立大学発ベンチャー企業である森林資源バイオエコノミー推進機構株式会社(BePA)は、自らのありたい姿を以下のように設計して、秋田県立大学の有するシーズの社会実装をhands-onで支援することによって加速化させるとともに、日本独自の木質系資源循環型社会の早期実現を目指します。
BePAのありたい姿
1.バイオエコノミーの日本における認知向上、正しい理解を目指した啓蒙・標準化活動
- 森林資源(特に木質系資源)を対象とした日本独自の「バイオエコノミー」理念の啓蒙・発信・標準化において、中心的な役割を果たす。
- 大学等の有するシーズの社会実装に向けて、シーズ発掘等のイニシャルステージからR&D実施、技術移転・量産ステージに至る各ステージにおいて、hands-onで支援するとともに、必要に応じて事業主体の一部機能を補完する。
代表取締役 高田 克彦
【略歴】1992年北海道大学大学院農学研究科林産学専攻博士後期課程修了、科学技術庁科学技術特別研究員(農林水産省・林野庁・森林総合研究所勤務)、九州大学農学部助手を経て、2001年秋田県立大学木材高度加工研究所助教授。2007年4月より教授。2020年4月より所長を務める。2018年4月に秋田県立大学発ベンチャーとして森林資源バイオエコノミー推進機構株式会社を設立し代表取締役に就任。2022年4月森林遺伝育種学会 会長就任。専門は森林資源遺伝学。