秋田県立大学では振動ボールミルや振動ロッドミルと比較して効率的かつ低コストに木質バイオマスから微粉砕物を製造する新たなリング媒体粉砕機(以下、タンデムリング型微破砕機、またはタンデムリングミル)を開発した。これまでにタンデムリング型微破砕機を利用して、1)高い酵素糖化率となるスギ微粉末の製造と同時酵素糖化処理による単糖の製造、2) 低コスト化学修飾手法(メカノケミカル処理)によるバイオマス度(植物由来度)の高いWPC木材-プラスチック複合材(WPC)の製造等を実施してきている。
当社はタンデムリングミルに係る特許2件を秋田県立大学から譲受し、この社会実装に向けて、関係企業との調査・研究を進めている。(動画参照)
本技術の主な特徴は以下の通りである。(実機の動画「機械説明編」、本機械により得られる微粉末についての説明動画「加工品説明編」)
・タンデムリングミル微粉砕機の特長は破砕時の温度上昇が小さいことである。すなわち、一般の破砕機では局所的に180℃以上になるのに対し、タンデムリングミル微粉砕機では120~130℃程度で収まっている。これにより微粉砕物のリグニンが変性重合することがなく天然の状態で残っており、樹脂との相溶性を維持できる。
・また、一般の破砕機による粉砕ではリグニンが重合することにより微粉砕物中のセルロースの結晶性がされる。一方、タンデムリングミル微粉砕機による粉砕ではセルロースの結晶性が低下する。
・タンデムリングミル微粉砕機による微粉砕物は親水性が高く、水中で沈降する。これは微粉砕物内の空気だまりがなくなるためと考えられ、樹脂との混合性の良化に貢献していると考えられる。
・タンデムリングミル微粉砕機の構造の利点は、化学物質の供給が容易であり、かつ化学物質が分散しやすいため、破砕工程時に同時に化学修飾反応が行えることである。また、前述のように反応器として使用する粉砕機内の温度が低下していることで、化学反応を安定して生じさせることが出来るという利点もある。
・タンデムリングミル微粉砕機は破砕刃による剪断だけによる破砕ではなく、押しつぶす形で破砕もあるのが特徴である。また、バッチ連続式の破砕機であり、化学物質の反応時間を取れるため破砕と同時に化学修飾を十分に行える。